Experience Based Training (指導者用)
 
こちらでは、独自の効果的な方法をご紹介致します。
 
フラットベンチプレス(超筋肥大・超筋力向上・競技用)
 
私もベンチプレスの競技に出ておりましたが、その名のとおり競い合いですので安全という側面からは最も遠いところにある方法・テクニックです。高重量を扱うために筋肥大及び筋力向上に大変効果的ですが、反面ベース筋力が出来ていないと、過度に使われる部位が出てくるためにあちこち痛くなったりします。(怪我をするという意味ではありません。)我慢しても高重量を挙げたい、競技に出たいという方向きのテクニックです。安全のためにはお勧めしません。
 
写真1.)いろいろな入り方(ベンチへの寝かた)がありますが、私はこれです。
まず、バーの下に口が来るように位置し、ベンチに両足を乗せブリッジし、首の付け根だけをつけて両肩甲骨をベンチから浮かせます。
 
 
写真2.)少しわかりづらいかもしれませんが、左肩甲骨をめいっぱい内転、下制させます。
 
 
 
写真3.)次は右です。左側が戻らないようにしっかりと保持しながら右肩甲骨を内転、下制します。
 
写真4.)なるべく胸の高さを維持するつもりで腰を反らしベンチの上に臀部を下ろします。
 
写真5.)そして両足を床に下ろし、さらにブリッジを高くしアーチをつくります。ポイントは肩と臀部の距離をできるだけ近くすることです。つまり胸の高さをできるだけ高くするということです。
この姿勢が腰に大きな負担をかけます。
 
写真6.)ラックアウトの前に酸素を吸い溜めしバーを胸の真上に持ってきます。
 
写真7.)10回挙げるなら息継ぎは6回目、8回目、9回目のスティッキングポイントを越えると同時に素早くおこないます。
この息継ぎは重さや熟達度により変わってきますが、10回くらい上がる重さであればその挙上スピードから上記くらいが適当かと思います。
 
【ベンチプレスの競技では】足裏はピッタリ地面についてピクリともしてはいけません。小指側でも少しでも浮いてしまえば挙げられてもファールになってしまいます。
足裏だけでなく、臀部も肩もベンチからわずかでも浮いてはいけません。バーを胸の上で一旦静止させて合図で押し上げます。そしてバーが水平で傾かずに両肘同時に伸びきって挙げると成功となります。
 
 【腕のエクササイズの位置づけ】
 
上腕部は大筋群の多関節筋ではなく小筋群の二関節筋であり、エクササイズとしては単関節エクサイサイズになります。
大筋群よりも運動単位は小さいのですが筋重量で比較すると多くの運動単位群を有し、神経支配比も小さく精妙な調節を行うのに適しています。つまりコントロールしやすいといえます。
 
また日常生活において非常によく使う部位であるので師範動作を模倣しやすく再現性も高いので短時間で動作を習得でき、すぐに取り入れられて安全に行なえるエクササイズ部位といえるでしょう。
この意識しやすい部位で全身のトレーニングに共通する短縮性・伸張性局面での動作スピード、スティッキングポイントの理解、羽状筋や紡錘状筋の違いによる負荷のかけ方などを体験し、知識・スキル・能力を獲得しておけば全身への応用も早くなります。
  
ただし、言うまでもなく指導者自身が正しい知識とフォーム、漸進やバリエーションをマスターしていなければ説得力も効果もない上に、急進(⇔対義語:漸進) することにもつながり危険です。
上半身のメインエクササイズの際、初心者は負荷を腕でコントロールしてしまい、腕自体が疲労しやすく、結果、胸や背中の筋群に効果的な刺激が入らないケースが多くみられます。
またディトレーニング期間があると熟練者も先に腕が疲れてしまうことが多いと思います。
 
これらのケースでも腕部エクササイズを優先的に行なうことで早期に神経の命令伝達を改善、出力を調節できるようになりその状態から脱出できます。
 
さらに指導の経験上、男性にとっては腕の太さは力強さの象徴であることが多いので、 腕部エクササイズによりごく短期間で腕が太くなれば全身に対するエクササイズへのモチベーションも上がり、トレーニングの継続につながります。それがやがて習慣となれば健康に対する恩恵も大きいと思われます。
 
このように小さな部位である腕部のトレーニングの成功は自己効力感を高め、その影響は身体全体に広がっていく可能性がある点で、これらの腕部エクササイズは各ステージにおける起爆剤となりえます。
 
腕は様々なスポーツシーンでは無論、日常的にも物を拾い上げる、バスの吊革や急な階段の手すりを持つ、車のハンドル操作、さらには体が弱っているときの寝起きの際にも腕は体を支えるために大きな役割を果たしています。 大筋群のメインエクササイズに加え、腕部エクササイズを行なうことによってスポーツパフォーマンスを向上させることや、日常生活動作の負荷を相対的に下げ円滑に行なうことは将来にわたって必要です。

【アームカール】

有名なエクササイズゆえに初心者からトレーニング愛好家まで多くのエラーが見受けられます。以下がそれらエラーです。

・手首を巻き込みながらバーを引き上げる

・肘を背中側に移動させながらバーをみぞおちあたりに引き上げる

・上体を反らせながら引き上げる

・バーを大腿部でバウンドさせる

・前後へ煽りながらバーを引き上げる

・クイックリフトのようにジャンプして引き上げる

・バーを引き上げたら脱力して戻す

・肘が伸びきる前に次のレップに入る

・足を前後に開きスプリットスタンスで行なう

・とにかく回数ありきで速く行なう

多くはモーメントアームを短くして負荷を軽くしたり、体幹を反らせたり、バウンドやジャンプによりスティッキングポイントを越えさせるなど、かけるべき負荷を軽減させているエラーです。またこれらのエラーは腰の傷害リスクも高めてしまうものが多いので以下の説明をし、指導することが防止に役立ちます。
① 背中を壁につけ、寄りかかることにより反動や上体の反りを防ぐ(ウォールカール)。   ② 上腕二頭筋は肘関節伸展位を0度としてそこから徐々に曲げていき約60~70度曲がったところ(起始部側から見れば約120~110度)で最大筋力が発揮されるので 、動作中最大負荷となる位置(前腕水平位)で最大筋力となるよう肘の角度・位置を調節すると効果的であることを踏まえ、プリーチャーカールのように支点となる肘を体側より少し前(10cm前後)に位置させる意識をもたせることが支点となる肘の固定につながる。

③ 短縮性局面だけのトレーニングと伸張性局面だけのトレーニングを比較した場合、後者のほうが筋力や筋肥大の向上が著しいという結果から、むしろ大切なのは下ろすことで『下ろすために上げる』という意識をもたせ、脱力して負荷を下ろすのではなく、一定のスピードで負荷をコントロールしながら、伸展性収縮を感じながら下ろすスキルを養う。

④ 上腕二頭筋は紡錘状筋なので筋線維が筋の長軸方向とほぼ平行に走っているために肘関節の曲げ伸ばしに直接作用する。したがって肘が伸びきる前に次のレップに入るのではなく、可動範囲いっぱいに大きく動かすことがこのエクササイズの効果を最大にする。

これらのことから、立位での種目はダンベルやバーベルの上げ下げにより起こる重心の移動に負けない体幹および支点となる肘のコントロールが必要であるため、まず座位の種目から導入し、立位へと難易度を上げていくことが望ましい。具体的にはマシーンやコンセントレーションカール、プリーチャーカールを選択し、次のステップとして自分で支点(肘)を支持するフリーウェイト種目に移行するのがよいでしょう。

なお、種目選択する際にはダンベル使用時の上腕二頭筋の最大限の伸展・収縮に関係する肩関節の伸展・屈曲、前腕の回内・回外や、バーベル使用時と同様ではあるが、手関節の掌屈による手関節屈曲筋群や積極的な腕橈骨筋の活動による前腕部の膨らみが物理的に肘関節の屈曲角度をわずかに浅くする点などにも気をつければより特異的なトレーニングとなるでしょう。

また器具がない場合には以下の代替エクササイズが効果的です。

【NSCAガイドライン外オリジナルエクササイズ】

マニュアルレジスタンスカール(写真1,2)

      写真1 手関節より近位にタオルで負荷をかける      写真2 腕橈骨筋や手関節屈筋群の関与を防ぐために手を開いて行なう 

様々な腕の形 、レベル、目的により最短で結果を出すエクササイズの配列はトレーナーに委ねられる。ベーシックなものができなければその事前(修正)エクササイズ、それがまたできなければさらに前に戻る必要があり、指導者が基本を深く理解していなければ戻ることも漸進することも難しくなってしまいます。

 
ライイングトライセプスエクステンション(NSCAのガイドラインに準じています。)
 
上腕三頭筋を大きくする非常に効果的なエクササイズです。
ベンチプレスのように仰向けになり5ポイントコンタクトの姿勢を取ります。バーを肩の真上(肩関節90度屈曲位)に保持した位置から肘を動かさずにバーを額まで下した後、動作を切り替え持ち上げます。肩関節の位置から二関節筋である長頭、単関節筋の内側頭、外側頭とバランスよく鍛えられるエクササイズといえます。(写真1,2)
 
写真1) 5ポイント(頭、肩、臀部、両足)コンタクトの安定姿勢を取る。
 
写真2)肘の位置は動かさずバーを額までゆっくりと下す。

よく見られるエラーは以下の通りである。

・5ポイントコンタクトが崩れる(特に背中を反らせる)

・プルオーバーのような動きで勢いをつける

・ベンチプレスのような動きになる

・肘が横に開く(肘を固定できていない)

・手首が過度に背屈する

これらのエラーが出てしまう場合には以下の代替エクササイズが有効です。
 
【NSCAガイドライン外オリジナルエクササイズ】
ライイングワンハンドダンベルトライセップスエクステンション(写真3,4)
 
 写真3)前腕中立位で肘のねじれを防ぐ 
   

                     写真4)わずかに肩関節を屈曲させた位置で肘を伸展し三頭筋で支える

ベンチに仰向けになり片手にダンベルを持ち、腰の反りを防ぎバランスを保つためにダンベルを持った側の脚はベンチの上に膝を立てるように位置させます。反対側の手で肘が外側に開かないように支えながら動作を行ないます。腰の反りや肘が開くエラーが左右で出なくなったら、バーベルに変え、次のステップとして両足の下に脚のせ台を置き腰の反りを防ぎながら行ないます。もともと腰が反りやすい場合は腸腰筋や大腿直筋のストレッチングに加え、キャット&ドッグなど骨盤のコントロールエクササイズも並行して行なうと良いでしょう。
 
なお上腕三頭筋は羽状筋であるので大きな力を発揮できるようにできており、筋力は上腕二頭筋よりも約30%大きくなります。このため上腕二頭筋よりも大きな負荷でトレーニングすると効果的ですが、ライイングトライセップスエクステンションのような前腕回内位かつ長頭伸展位で肘を固定する種目において始めから大きな負荷をかけると肘を痛める恐れがあるため他の種目で疲労させてから行なうなど種目の配列にも考慮が必要です。
また、内側頭・外側頭は単関節筋、長頭は肩関節もまたいでいる二関節筋であるので肩関節の屈曲・伸展の肢位により強く働く筋が変わり発達にも影響する。発達させたい筋、目的により種目選択すると効果的です。
 
 【NSCAガイドライン外オリジナルエクササイズ】
変形リバースプッシュアップ
 
器具がない場合は変形リバースプッシュアップが効果的です(写真5,6)。手の幅や肩関節の内外旋で長頭の活動を少なくしたり上腕三頭筋それぞれのおおよその動員割合を変えられます。

                              写真5)背中を丸めずに上体を垂直に下す。手の幅は発達させたい部位により変更すると良いでしょう。

                              写真6)肘を伸ばすと同時に臀部を引き上げ、上腕が垂直になるまで体重をかけます。

参考文献

1. 阿部良仁著, フィットネスインストラクターのためのコンディショニング指導法,HEALTH-NETWORK NOVEMBER, 2008, 社団法人日本フィットネス協会.

2. 阿部良仁著, フィットネスインストラクターのためのコンディショニング指導法, HEALTH-NETWORK OCTOBER, 2008, 社団法人日本フィットネス協会.

3. 有賀誠司著, 競技スポーツのためのウェイトトレーニング, 2002年体育とスポーツ出版社.

4. 福永哲夫監修, NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識, 2005, 森永製菓.

5. 石井直方著, レジスタンストレーニング, 1999年ブックハウスHD.

6. 川野哲英著, ファンクショナルエクササイズ, 2004年ブックハウスHD.

7. 小出清一著, 第2改訂版新・図解機能解剖学, 2009年社団法人日本フィットネス協会.

8. NSCAジャパン レベルアッププログラム レベルⅠ講習会テキスト 2008年NSCAジャパン

9.広島国際大学教授 二宮石雄 編者  

  神戸大学教授    安藤啓司 編者

  大阪大学教授    彼末一之 編者

  広島大学教授    松川寛二 編者、スタンダード生理学 2004年 文光堂

 
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